日本で働く外国人の社会保険を徹底検証!

近年日本の労働人口の減少が叫ばれていますが、一方で外国人の採用は増えてきています。しかし、いざ外国人を採用しようとしても、どのような手続きが必要なのか、社会保険の加入義務はあるのか、外国人はマイナンバーを持っているのか?など、細かな点がわからず困っている企業や採用担当者は少なくないでしょう。
本記事では、初めて外国人労働者を採用する際の必要書類、彼らの社会保険に関する手続きの仕方や問題・疑問をまとめてご紹介します。

日本の社会保険制度とは?

まず、日本の社会保険制度についておさらいしていきましょう。
社会保険制度とは、医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の総称のことで、日本に住む国民全員に加入義務があります。それぞれの社会保険の役割をご紹介いたします。

医療保険

医療保険は、加入することにより、医療関係の自己負担額が3割となり、残りの7割は国が負担してくれるという保障制度です。
会社に勤めている人用の健康保険と、それ以外の自営業者(フリーランス)、パート・アルバイトなどの短時間労働者、扶養範囲で生活する専業主婦などが加入する国民健康保険の2種類に分かれています。健康保険に加入している人の妻などは、収入があっても年間130万円未満であれば被扶養者(扶養家族)として認められ健康保険が同じように適用されます。扶養家族が何人いても主たる扶養者が支払う健康保険料は変動しません。

年金保険

年金保険は、日本に在住する20歳以上の国民は全員加入義務があり、保険金を徴収されます。老後の生活費の積み立てをメインとしていますが、加入した本人が万が一死亡した場合は遺族が受け取れる遺族年金、また不慮の事故などで障害を持ってしまった場合には障害年金を受け取ることができるなど、年金保険は生きるための保障としてさまざまな用途に使われます。
会社員の場合は積み立てが二重になる厚生年金保険、それ以外の自営業者や公務員、扶養範囲内の人は国民年金に加入します。

介護保険

40歳を超えると、介護施設や介護ヘルパーの利用をするときにサービスを受けられる介護保険にも加入する義務が発生します。介護保険は扶養範囲で生活する人にも加入義務があります。
保険料は医療保険と一緒に支払うことになりますが、65歳以上の場合は単独での支払い(年金から天引きされる)となります。

雇用保険

雇用保険は働く人を守るために作られた保険で、一般的な会社員であれば加入義務が発生し雇用保険被保険者証が渡されます。働いている人には必ず適用される制度で、扶養範囲で生活している短時間労働者にも加入義務があります。
失業したときにハローワークで手続きをすると失業給付金を受け取れますが、この給付金は毎月支払っている雇用保険から支払われているものです。その他にも、育児休業の給付金や介護のための給付金も雇用保険から支払われます。
雇用保険の加入条件は3つあります。1つ目は労働期間で31日以上働く見込みがあること。2つ目は1週間あたりの所定労働時間が20時間以上であること。3つ目は学生ではないことです。ただし3つ目に関しては、卒業間近に働き始め卒業後そのまま働き続ける場合などは例外となり、加入義務が発生します。

労災保険

業務中や通勤途中にケガをした場合、この労災保険から給付金が支払われます。これは不慮の事故や震災などの自然災害が理由でも保証されています。
大ケガを負って社会復帰が難しい場合は、社会復帰するまでのフォローアップとして一時金または年金形式で受け取ることができ、労働者が死亡した場合は遺族年金が支払われることもあります。なお、雇用保険と労災保険をあわせて労働保険と呼ばれています。
労災保険は自分で加入の可否を選択することはできません。1人以上の労働者を雇用する事業所に適用され、労働者全員に加入義務が発生します。正社員だけではなく、契約社員や扶養範囲で生活するパート・アルバイトなどにも加入義務があります。短時間労働者などは加入義務がないと勘違いされることがありますが、労災保険は必ず入らなければならないので気を付けましょう。

日本で働く外国人は社会保険への加入が必須

日本に居住する日本人には複数の社会保険に加入する義務があることをご説明いたしましたが、外国人についてはどのような仕組みになっているのでしょうか。日本に滞在する期間や、帰国してからどうなるかなど、細かい問題も確認しましょう。

外国人社会保険加入の判断基準

先に述べた通り、社会保険の中には健康保険や厚生年金など複数の種類があり、それぞれの加入義務の有無や手続きの際の必要書類は異なってきます。

健康保険

企業には、必ず全国健康保険協会に加入しなければならない強制適用事業所と、任意加入の任意適用事業所があります。全国健康保険協会に加入している事業所の従業員は、国籍・年齢・性別を問わず被保険者(健康保険の加入者)となることが原則です。つまり、全国健康保険協会に加入している事業所で働く場合は、外国人労働者も健康保険への加入義務が発生するということになります。
適用除外となるケースもいくつかありますが、特筆すべきは下記の2パターンです。

① 従業員数500人以下の事業所
・その会社で1か月勤務する正社員の平均所定労働時間の4分の3以下であるパートタイマー
・社会保障の協定締結国の健康保険に加入している外国人労働者
この2つに該当する場合の加入義務はありません。
② 従業員数501人以上の事業所
・週の労働時間が20時間以下
・月の賃金が88,000円以下
・雇用の期間が1年以下
・夜間や通信学校、定時制ではない学生 
これら4つすべてに該当する場合は加入義務がありません。
ここで注意すべき点としては、健康保険と厚生年金保険はセットとなるため健康保険か厚生年金保険の片方にしか加入しないのはNGということが挙げられます。

厚生年金保険

厚生年金保険は、健康保険と同様に外国人にも加入義務が発生します。日本に住所を持っている20歳以上60歳未満の人であれば国籍問わず加入義務があるため、外国人だから関係ないと思って入らなかったり企業側も支払いを怠ったりしてしまうと問題となってしまいます。

介護保険

介護保険は、40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人または65歳以上の人はすべて被保険者となるため、日本に住所を有する限りは外国人であっても適用される制度です。外国人を配偶者に持ち、扶養範囲で生活している人も同様に適用されます。
外国人で日本に3か月以上在住した人は、外国人登録をすると同時に日本の住民記帳台帳に登録されるため、その登録履歴をもとに介護保険のサービスを受けることになります。
例外もあり、3か月以上滞在しても滞在目的が観光や遊学などの「特定活動」の場合は、一定の条件をクリアしていれば介護保険の被保険者とはなりません。もしくは、滞在期間が3か月未満の場合は介護保険適用外となるため、介護保険の被保険者の資格はなく日本の介護サービスは受けることができません。

労災保険

労災保険は、1人でも雇用しているのであれば企業が必ず納めなければならない保険です。外国人であっても労災保険は適用されますし、万が一企業側が労災保険を故意に未納であった場合は、雇用者の請求を全額負担しなければならないケースもあります。企業の大小関わらず、労働者の仕事中の事故・けがを守るための保険なので、雇用主は外国人社員に対してもきちんと労災保険を整備しましょう。

雇用保険

雇用保険も他の社会保険と同様に、基本的には日本人と同じ条件で外国人にも適用されます。外国人社員だから社会保険はいらないだろうという考えは誤りで、雇用主は保険料をきちんと納める義務があります。未納の場合は、労使の大きな問題・トラブルへと発展する可能性があるので十分に注意しましょう。
雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上であれば適用される保険です。手続きの際は在留カードが必要となるので、外国人社員を雇用する際は必ず在留カードの写しを受け取りましょう。

外国人社員の適用と給付(厚生年金)

厚生年金は、20~60歳の間納め、その納付金額に比例して給付金を受け取れる仕組みですが、納付期間が25年以上必要という縛りがあります。
日本人であれば日本で働き続けていれば特に問題はありませんが、外国人の場合は来日の時期や一時帰国の期間によっては25年に到達せず年金を受け取れなくなってしまいます。そこで、外国人の場合は、60歳までの25年に満たせない場合は、任意脱退として年金を納めなくても良いことになっています。

厚生年金適用免除の制度「社会保障協定」

外国人社員の年金に関して覚えておきたいのは、社会保障協定の有無です。社会保障協定とは、母国と日本で年金が二重払いになることを防ぎ、日本で納めた年金を母国に戻ってからも受け取れる仕組みのことで、16ヵ国と協定を結んでいます。
本来、健康保険と厚生年金保険は同時に加入する義務がありますが、この社会保障協定は厚生年金保険のみに適用されて健康保険は適用されません。つまり、社会保障協定を締結している国出身の外国人の場合は、厚生年金保険は自国の制度に加入しつつ健康保険は日本で加入する、というケースもあり得ます。
以上のことから、雇用主は社会保障協定を結んでいる国を覚えておく必要があります。

日本が締結している社会保障協定国一覧

現在、日本と社会保障協定を結んでいるのは、アメリカ、ドイツ、イギリス、韓国、フランス、ベルギー、カナダ、オーストラリア、スペイン、チェコ、スイス、ハンガリー、アイルランド、ブラジル、オランダ、インドの16ヵ国です。

厚生年金の脱退一時金とは?

社会保障協定は、厚生年金保険の二重負担を防ぎ、日本と自国を行き来する際に損がないように考えられた非常に大事な制度ですが、出身国が社会保障協定国でないと、せっかく納めた年金が返ってこないことになってしまいます。
そんな場合のために、脱退一時金制度という納めた税金の一部を払い戻してくれる制度も用意されています。これは、厚生年金もしくは国民年金の加入期間が6か月以上で、年金を受給せずに帰国した外国人が使用することができる制度です。しかし、必ずしも満額返ってくるという訳ではなく、一時金として受け取れる金額も都度変わっているため、雇用主は最新情報を確認し外国人社員に伝えていき、未納問題やトラブルに発展する可能性を未然に防ぎましょう。

脱退一時金の受給資格条件は以下の4つです。
・厚生年金保険(国民年金)の加入期間が6か月以上ある
・日本国籍を持っていない
・日本に住所を持っていない
・障害年金など受給資格がない

脱退一時金の金額は日本年金機構により定められています。

脱退一時金の金額

厚生年金保険の場合の脱退一時金の計算式は「被保険者期間の平均標準報酬額×支給率」ですが、この支給率は日本で被保険者であった期間によって変動します。たとえば、被保険者期間が6か月以上12か月未満であった場合は、支給率が6なので納付した期間の約半分の一時金を受け取れることになっています。
一方、国民年金保険の場合は受給額が決まっていて、例えば平成30年度に6か月以上12か月未満の国民年金を納めていた外国人は、49,020円の脱退一時金を受け取れます。

アルバイト・パート採用でも加入は必要

ここまで外国人社員の社会保険の加入義務についてお話しましたが、アルバイト・パートや扶養範囲の人にはどう適用されるのかをまとめました。

年金、健康、介護保険

これらの社会保険は、アルバイト・パートの短時間労働者や扶養範囲内の労働者であっても、下記の要件を超えれば加入義務が発生します。

・社員の労働日数または週の所定労働時間の4分の3以上
・週の所定労働時間が20時間以上
・雇用期間が1年以上見込まれる
・月額8.8万円以上の収入を得ている
・学生ではない
・501人以上の企業である

雇用保険

アルバイト・パートなどの短時間労働者で、所定の労働時間に満たない場合は雇用保険の加入義務はありません。所定の時間は、31時間以上もしくは週に20時間以上です。

外国人の社会保険加入の手続きについて

それでは、各社会保険の手続きの必要書類などを確認していきましょう。

外国人の雇用保険加入手続きと必要書類

永住外国人以外の外国人社員は、雇用保険被保険者資格取得届をハローワークに雇い入れる翌月の10日までに提出します。在留カードに記載されている国籍と在留期間を確認して忘れず書き写しましょう。
また、雇用する外国人が雇用保険に加入しない場合でも、雇い入れる翌月末までにハローワークに外国人雇用状況届出書を出す義務があります。

外国人の社会保険手続きに困ったら?

ここまでご説明してきた通り、外国人社員にも日本人と同様に多数の社会保険手続きが発生します。また、社会保険の種類や彼らの出身国、日本での滞在時間、労働時間によって加入義務の有無や手続き方法も変わってきます。これらの知識を正しく暗記しておくことは雇用主にとって非常に困難なため、ハローワークには外国人雇用管理アドバイザーが在籍しています。
その他にも、手続き関係のことであれば、行政書士事務所や、外国人採用を支援している人材会社などに相談するのが良いでしょう。

日本に住んでいる外国人のマイナンバーは?

外国人であっても、日本に住所を有する人には必ずマイナンバーが付与されます。日本に90日以上長期滞在する外国人は、在留カードの手続き後日本で住む場所を決めたら、日本人と同様に転入届を提出して住民票を作成することができます。
もし途中で帰国したとしても、マイナンバーの番号は12桁で生涯変わりません。マイナンバーは、社会保険の納付管理や公的な税金納付手続きにも紐づけられています。つまり、社会保険が何かしら未納であった場合や何か問題があった際は、このマイナンバーから確認すれば一目瞭然となります。外国人の不法就労問題は定期的に話題となりますが、今後はマイナンバーで管理すること情報がよりクリアとなっていくでしょう。このマイナンバー情報は外国人がビザの手続きをする際にも影響してくるため、雇用主側もより一層気を引き締めて外国人労働者の社会保険手続きを行う必要があります。

外国人の社会保険についてまとめ

日本で働く外国人の社会保険には複数の社会保険制度がありますが、基本的には日本人と同様の加入義務があるということを押さえておきましょう。
ビザの種類、滞在期間、帰国のタイミング、働く期間、出身国、アルバイト・パート・扶養範囲内の労働者かどうかなどによって、各社会保険の加入状況などの情報はマイナンバーに紐づけられていきます。知識が曖昧なまま雇うのではなく、事前によく確認しておくことが非常に重要です。

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